コラム

リーガルマインド(法的思考力)って一体何なのか?

「リーガルマインド」という言葉を最近よく聞きます。
何か定義があるのかと思い調べてみましたが、様々な人が様々に用いており無いように思います。
私自身が「リーガルマインド」という言葉と出会ったのは20年ほど前の法学部生のころです。「法的思考力」とも言われており、法律の世界の中で求められている能力という理解でした。しかし、最近は法律の世界だけでなく広くこの能力が求められているようです。

当然のことですが、弁護士には法的思考力が求められます。司法試験に合格するため基本的な法律(憲法、民法、刑法、商法、会社法、手形法、民事訴訟法、刑事訴訟法)を勉強しますが、そこで何を身につけるのかというと法的な知識はもちろん、法的思考力を身につけます。
特に司法試験合格後に入所する司法研修所はこの法的思考力を身につける場と言えます。

仕事を聞かれて「弁護士です。」と答えると、「すごいですね!あんな分厚い六法全書が頭に入っているんですよね!」と言われることが結構ありますが、そんなことはありません。我が国における法律の数は約1900件ですし、このほかに規則等が存在しており、これらを含めると膨大な数になります。
弁護士にとってもそのほとんどは知らない法律です。ただ、法律のどこに何が規定されているのか、案件においてどの法律のどの条文が問題なるのかといったことは理解できます。それも「法的思考力」のおかげと言えるでしょう。

私は個人開業して地域住民や地元中小企業から依頼を受けている町の弁護士(マチ弁)です。相談者や依頼者のほとんどが、法律とは縁遠い方(普段から法律を意識して生活しているわけではない方)です。
弁護士の仕事は、そういった方のお話を聞く「法律相談」からたいてい始まります。その時間は30分から60分間程度ですが、お話を聞きながら、

①事実と意見(主張)を区別して抽出し、
②争いのポイントを理解し、
③事実や情報についての裏付けの有無や信用力を検討し、
④その意見(主張)が法的に構成できるものなのか

を検討していきます。
これが「法的思考」です。この法的思考は、法律相談の場面だけでなく、相手方との交渉においても、訴訟においても繰り返し行われ、相手方の交渉や訴訟においては、この法的思考をもとに相手を論理的に説得していくことになります。

弁護士が関わる訴訟や交渉は、確かに一般の人からみると特殊な世界かもしれませんが、実は人と人との関係を調整する一場面にすぎません。
そうだとすれば、ビジネスの世界でも、町内会の議論でも、サークル活動でも、学級会でも人と人とが関わる全ての場面において法的思考力=リーガルマインドは役立つといえるでしょう。

この記事をお読みになった皆さんも、①事実と意見を区別する、②争いのポイントを理解する、③事実については裏付けがあるか確認する、④争点について事実に即して合理的に説得する。ということを実生活の中で意識してみてはいかがでしょうか。

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