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コラム|知っていますか?裁判所速記官。

裁判所速記官について

みなさんは、裁判所速記官って知っていますか?ドラマなどでみる法廷の尋問シーンでは、裁判官、弁護士、検察官、証人がいますね。このあたりは、みなさんも想像が付くかと思います。

実は、かつては法廷でよく目にしていましたが、どんどん減っている職種があります。裁判所速記官です。裁判所速記官は、法廷でのやりとりを記録に残す裁判所の専門の職員です。

裁判所速記官は、1997年には806人いました。しかし、最高裁判所が裁判所速記官の養成を停止し、令和3年4月時点では160人に減少しています。

裁判所速記録の重要性

裁判所速記官が作成する速記録は、証人の証言をそのまま文字にします。そして、その内容は、裁判官といえども変更を命じることができないとされています。正確で、迅速で、客観的であり公正である裁判を実現するには、正確な記録が求められますが、裁判所速記官による速記録こそがその要請に応えられると言えます。

では、速記官が減少している今、どのように記録をとっているのか?現在の裁判の記録は、録音反訳といって、録音した音声を業者が文字に起こしているのが中心です。

しかし、私は、この方式には、録音データの紛失等の事故が起きうる点、情報管理の点で問題があると思っています。

一方、裁判所速記官の作成する速記録は、法廷において、専用のタイプライターを用いて記録します。ですから、録音データの紛失や情報管理の観点から問題もありません。そして、何より裁判所速記官の作成する速記録は、極めて迅速に、正確な記録がなされます

裁判所速記官制度は存亡の危機にありますが、速記官養成を再開しないという最高裁判所の方針には大いに疑問を覚えます。

諸外国ではどうなのか?

ところで、日本では専用のタイプライターと速記符号を自動反訳するソフト「はやとくん」を組み合わせることで、字幕を出すように瞬時に文書を表示することが技術的に可能です。これをリアルタイム速記と呼んでいますが、外国でもリアルタイム速記の技術があります。諸外国では、このリアルタイム速記が活用されており、アメリカでは現在では6万人を超える速記者がいると言われています。ハーグの国際刑事裁判所でもリアルタイム速記が活用されています。

速記官養成再開の運動をしています

当事務所の弁護士大塚信之介は、埼玉弁護士会の速記録問題特別対策委員会に所属し、2019年には委員長もさせていただきました。現在も委員会の一委員として、一日も早く速記官の養成が再開されるよう、そして裁判所の記録を速記録とするよう活動しております。みなさんが、少しでも裁判所速記官制度に興味を持っていただけると幸いです。

興味がある方は、裁判所速記官制度を守る会のYouTubeチャンネルもご覧ください

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