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相続における民事信託契約の活用

民事信託や家族信託について最近質問を受けることがあります。民事信託とは、資産の所有者から資産を託される人に資産の所有権を譲渡し、これを託された人が利益を受ける人のために資産を管理承継する仕組みをいいます。
この民事信託を老後の財産管理や相続の場面で活用する動きがあります。具体例を挙げて説明しましょう。

<モデルケース>
75歳のAさん(男性)は、今後の財産管理が心配になってきました。Aさんの財産は、自宅の土地建物(評価額5000万円)と預貯金が3000万円ほどあります。
家族は、70歳の妻のBさんと、40歳の長男のCさん、36歳の長女のDさんがおり、CさんもDさんも結婚し別世帯で暮らしています。Aさんとしては、今後の財産管理はCさんに任せて、自分が亡くなった後は、自宅をBさんの生活のために使ってもらい、最終的には面倒を見てくれたCさんに自宅を引き継がせたいと思っています。

さて、判断能力が低下した場合の備えとして、従来は、任意後見契約という制度を用いることがありました。上記のケースではCさんを任意後見人に指定し、任意後見契約を締結することが考えられます。しかし、任意後見制度では財産が家庭裁判所の監督下に置かれ、大きな財産を動かす際に家庭裁判所とのやりとりや許可が必要になるという点が難点となることがしばしば言われています。

では、民事信託を利用するとどうなるのでしょうか。Aさんを委託者、Cさんを受託者として受益者をAさんとする信託契約にすれば、Aさんの財産をCさんがAさんのために管理することができます。そして、Aさんが亡くなった後にBさんのためにAさんの財産を使わせるように併せて決めておき、Aさんが最終的に亡くなった場合に残余財産をCさんに帰属させるよう取り決めておけばAさんの希望に添えることになりそうです。

このように、民事信託契約は、上手く活用すれば、従来の任意後見制度、遺言などを組み合わせていくよりも財産を託す人、託される人にとって、より柔軟な取り決めができると思われます。

上記のモデルケースは簡単なケースですが、収益物件があるなどのより複雑なケースにおいては民事信託を利用するメリットは大きくなります。成年後見制度を利用すると財産処分が困難になりますし、収益の分配などもきめ細かに決めるのに民事信託契約が適しているからです。
しかし、注意も必要です。巷では民事信託万能のような宣伝文句も見られますが、制度の限界もあります。また、受託者には善管注意義務、分別管理義務、忠実義務、帳簿作成・報告義務などの様々な義務や責任が課せられますから、フリーハンドで自由に管理ができるとは思わない方が宜しいです。

民事信託契約を締結したいという場合には、遺留分侵害がないか、税金がどのようにかかってくるのかといった点も無視することは出来ません。総合的な法的判断が必要になりますので、是非、弁護士にご相談ください。

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