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終活と遺言書について

人生100年時代といわれています。ある年齢になったら就学し、就職し、定年を迎えるという生き方だけではなく、さまざまな生き方(人生のありかた)が認められる時代です。人々の価値観も多様になり、長い人生を「どう生きるか」ということをより考えるようになってきました。自分の人生を豊かにするため、自分の人生について自由に決める権利(自己決定権)が今まで以上に求められているのではないでしょうか。

人生が終わった後のことを決めることも、その人が「どう生きるか」に関わってきます。終活という言葉が言われるようになって久しいですが、「自分らしい最期を迎える」という終活が,最後の自己決定といっても過言ではありません。

終活の一つとして、財産をどうやって引き継いでもらうかを決めることが挙げられています。「遺言」は、生前に示した遺言者の意思表示について死後に法的効力を認めるものであり、終活の一つとして遺言書を作ることが注目されているようです。

さて、遺言ですが、誰でも遺言することができるのかというと,そうではありません。民法では、「15歳に達した者は、遺言をすることができる。」とあり、15歳未満の方は遺言することができません。
また、意思能力がない方の遺言も無効とされています。意思能力があるかどうかは、一般に見当識(時間や場所など自分が置かれている状況を把握すること)、記憶力、認知能力、知能をもとに判断されており、高齢になるなどしてこれらの能力が低下すると遺言は難しくなってきます。

遺言の方式はいくつかありますが、ここでは、自筆証書遺言公正証書遺言に触れたいと思います。

自筆証書遺言とは、遺言者の全文、日付、氏名を自分で書き、押印して作成する方式の遺言です(遺産目録は自署ではなくパソコン等で作成することも可能です。)。これは、誰にも知られずに簡単に遺言書を作成できる点や、費用がかからない点がメリットとされています。しかし、遺言については、その成立要件に一定の方式が要求されているため、その方式にしたがっていないと無効とされる危険性が高いことや、偽造・変造の危険性があることがデメリットとされています。

一方、公正証書遺言は、遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。公正証書遺言のメリットとしては,公証人がかかわることで内容的に問題のない遺言ができること、遺言能力や遺言意思が無いなどとして遺言が無効であるなどの主張がされる可能性が少ないといえること、公証人が原本を保管するので破棄・隠匿がなされるおそれが少ないこと、家庭裁判所の検認の手続が不要であることが挙げられます。

このように、メリットデメリットがあり、どの方式がよいのかはケースバイケースですが、自筆証書遺言については、自筆証書遺言保管制度が2020年7月より始まりましたので、自筆証書遺言を選択する人も多くなってくると思われます。自筆証書遺言保管制度は遺言書を法務局で保管・管理してもらう制度であり、これを利用した場合、保管申請時に民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかのチェックが受けられたり、偽造・変造・破棄の心配がなくなったり、家庭裁判所の検認が不要になったりと従来自筆証書遺言のデメリットとされていたところのケアができるようになりました。手数料はかかりますが、公正証書遺言を作成するよりも低額で済みます。もっとも、遺言内容や遺言能力の有無についてチェックされるわけではありませんので公正証書遺言と比べ有効性の担保があるわけではありません。自筆証書遺言保管制度を利用する場合においても、弁護士へ相談等されることをお勧めします

自筆証書遺言にしても公正証書遺言にしても、判断能力がしっかりしているうちに作成しておく必要があります。遺言をのこすということも「終活」の考え方により、自分らしく生きるための前向きな行為と捉えられるようになってきました。ご興味があればご相談いただければと思います。

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